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【担当医】辻 芳之、辺見貴至、藤岡真紀(女医)、伊田昌功、加藤浩志、

はじめに

心と身体に優しい治療を

 婦人科部門では本当に多くの疾患がありますが、心と体に優しい婦人科医療を理念としてます。そのためには、迅速な診断と適切な治療を直ちに開始し速効的に治療を済ませることが大切だと考えています。また、良性疾患はできる限り侵襲の少ない治療法を選択することを心掛けており、よくある子宮筋腫は少々大きくとも患者さんに具体的な不利益が無い場合は必ずしも手術しなければならないことはありません。問題になるのは強い月経痛、不妊症、貧血になるほどの過多月経を合併するような場合ですが、このような場合、子宮筋腫はたいてい子宮の内側にとび出ていますので、殆ど子宮鏡手術で治療できます。術後1日か2日で退院していただいて、退院した当日から仕事に復帰できるという、以前に比べれば夢のような方法です。すでにこの手術を神戸アドベンチスト病院に導入してからの手術件数は近畿圏でも最も多い病院の1つになっており、多くの患者さんから感謝のお言葉をいただいています。

神戸アドベンチスト病院
産婦人科統括部長 辻 芳之

子宮がん

 子宮癌は子宮頸部癌と体部癌に分かれますが、過去20年間、一貫して低下の傾向にあった子宮頸部癌による死亡率が、ここ数年で増加に転じています。特に若い女性の子宮頸部癌が増加しており、今後10年間で大きな問題になることが指摘されています。この原因は性感染症の蔓延と深い関係があり、特にヒトパピローマウイルスという子宮癌発癌ウイルスの感染が家庭の主婦にまで広がってきているからであると考えられています。当院の産婦人科では、健康な生活を維持するために、発癌性の高い種類のヒトパピローマウイルス感染を早期発見することと微小な癌もしくは前癌状態でその細胞を排除することに努めています。もし早期に見つかれば、ラジオ波手術という方法でごく小さく子宮の入り口を焼ききるだけで治ってしまい、術後入院の必要もありません。そのような体に優しい治療を行いたいと思います。また子宮体部癌についても注意深く経膣超音波検査と子宮鏡を行うことで、適切に前癌状態を見つけ、簡単な治療であとの心配がなくなることが多いので積極的に進めています。

子宮膀胱脱

健康な方に多い子宮膀胱脱

 子宮や膀胱は骨盤底のじん帯で腟の上方に吊り上げられています。しかしこれらを支えているじん帯はお産のときに多かれ少なかれ損傷しています。それでも若いときは組織がしっかりしているのでなんとか支えていますが年をとって女性ホルモンがなくなると損傷していた部分が弱くなります。そして、子宮や膀胱を支えられなくなって腟から出てくるのを子宮脱や膀胱脱と言います。
 症状は長く立っていると下のほうが圧迫を受けるような嫌な感じから、進行すると股の間に何か挟まったようになって歩きにくくなったり、膀胱が垂れ下がってくるため尿が出しにくくなったり、漏れたりするようなこともあります。ひどくなると旅行にも出られなくなります。
 この病気の厄介な点は、かかっている女性がこれといった病気を持っていない健康な方が多い事です。なぜならば、健康で働き者だったからこそ、お産を経験し、子育てをし、力一杯充実した人生を送ってこられたその結果、子宮膀胱を支えるじん帯を痛めてしまったといえる病気だからです。

1人で悩まないで

 この病気を患っておられる女性はたくさんおられます。おそらく近畿だけでも10万人以上いるでしょう。60歳近くになって子供も独立、「やれやれ、さあ、これからは私の人生だ!」と旅行や趣味に人生を楽しむ年齢です。そんな時期にこの病気に邪魔されてしまうのです。しかし、『子宮が降りている』なんて恥かしくて誰にも相談できず、一人で悩んでおられる方が多いのです。
 以前から子宮膀胱脱の治療法は、手術で伸び切っているじん帯を縫い縮めて引き上げるという手術が主流でした。しかし本来弱ってしまっているじん帯を縫い縮めても再度伸びてしまい、再発をすることが多くありました。残念ながら、産婦人科でも子宮膀胱脱手術を専門的にする医師がなく、手術の方法も長く進歩しませんでした。ところが世界的な高齢化社会と、女性の自立が叫ばれる時代になり欧米で新しい手術の開発や研究が盛んになってきました。日本でもようやく今年から泌尿器科や産婦人科の医師たちで日本女性骨盤底医学会が結成され新しい手術を導入したり専門医の養成も行うようになりました。
 最近の新しい手術として緩んでしまった骨盤のじん帯を締めなおすのではなく血管をつなぎ合わせるのに使う丈夫で体に反応しないポリプロピレンで編んだメッシュを骨盤の底に貼り付け、痛んだじん帯を補強するメッシュ手術法が注目されています。この方法は従来法に比べ成績も良く、再発も少ないことから次第に広がってきています。まだ技術的にやや難しいので一般的ではありませんが従来の手術方法に比べ、この方法はお腹も切らず、痛みもない手術ですが高い治療効果があり、再発が殆どなく術後は今までの悩みがうそのようだと喜んでもらえることが多いようです。一人悩まず、専門医に相談して、せっかくの人生を楽しみましょう。

子宮メッシュ手術

【メッシュ手術の方法】

  1. 前後2枚のメッシュを膣より挿入。
  2. 内股の切開部(4ヵ所、約10ミリ)よりメッシュの両端を出して位置を固定。
  3. 切開部より出ているメッシュは切り取り、切開部を縫合。
  4. 体内のメッシュは、組織になじみ、子宮、膀胱と直腸を完全に固定。

【メッシュ手術の利点】

  • 元来、性器があるべき自然な位置での整復ができる。
  • 本来の組織を全く切除しない
  • 術後の違和感がない。自然な感覚。
  • 再発が少ない(3年後再発5%)
  • 侵襲(手術による組織の損傷)が少ない。

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